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クール  David E. Kuhl flag

経歴と業績

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クール(David E. Kuhl, 1929-2017) [1]

アメリカのペンシルベニア州に.高校時代,甲状腺癌の放射線性ヨード治療の記事に触発され,理科室にあったウラン化合物の試薬を使ってラットのオートラジオグラフィーを撮影する実験を行ってWestinghouse Talent Search奨学金を獲得,1947年テンプル大学に入学して核物理学を専攻,1951年にペンシルベニア大学医学部に進んだ.入学と同時に放射線科のStudent assistantとなった.同年,Cassenがシンチレーションスキャナを発明したが,医学部1年生のクールはこれを改良して,インクペンによる記録ではなく,放電管を利用して写真上にグレイスケールを表示できる装置 Photoscan を開発した.これは,その後の臨床機に標準的な方法として広く取り入れられ,これにより臨床医に核医学画像が広く受容されることとなった.

1956~8年,海軍病院の核医学科に勤務中,断層法の教科書を読んで核医学画像における断層法の着想を得た.ペンシルベニア学に復帰後,エンジニアRoy Edwardsと協力して,断層撮影装置の開発を進め,1959年にフライス盤を利用した実験装置で横断像の撮影に成功し,以後SPECT装置 Mark II(1964), Mark III (1970),Mark IV(1976)を次々と開発し,臨床的有用性を示した.

1970年代からは脳血流,脳代謝の画像化に取り組み,Louis Sokoloff(米国精神衛生研究所),Alfred Wolf (ブルックヘヴン国立研究所)らとともにFDGの研究を開始し,1976年にニューヨークのブルックヘヴンで合成され,ペンシルベニア大学に搬送されたFDGによる脳SPECT撮影に成功した.ペンシルベニア大学にはサイクロトロンがなかったため,1976年にカリフォルニア大学(UCLA)に移り,PhelpsらとともにFDG-PETの研究を進め,脳,心臓疾患におけるFDG-PETの有用性を確立した.さらに1986年からはミシガン大学で研究を続けた.

この間,核医学関連学会の要職を歴任,北米放射線学会のOutstanding Researcher Award (1996), 日本国際賞(Japan Prize)(2009)など数々の賞を受賞している[1-4].

出典