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オルデンドルフ  William H. Oldendorf flag

経歴と業績

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オルデンドルフ (William H. Oldendorf, 1925-92) [4]

ニューヨーク州に生まれ,1947年にAlbany Medical Schoolを卒業した.学生時代には,勉強熱心のあまり解剖実習の遺体を持ち帰ってキッチンで解剖していたという.地元のラジオ局のディスクジョッキーをつとめたこともある.卒業後は精神医学のレジデントを修了,海軍病院勤務を経て1956年にカリフォルニア大学(UCLA)の神経内科のスタッフとなった.

臨床医として数多くの気脳写,脳血管造影を手がける中で,より低侵襲,確実な診断法を模索するようになった.X線を利用して冷凍オレンジの水分分布を研究している若い技術者の実験に着想を得て,1960年,被写体を回転させることにより内部のX線吸収値の違いを検出できることを手作りの実験装置で証明し,1960年の論文に発表した.これはX線CTの先行研究にあたるものであったが,これに関心を持つ企業はなく,臨床機製作には至らなかった.1973年にX線CTを発明したHounsfieldは,その論文中にこの先行研究に言及している.1974年にZiedses des Plantes賞,1975年にAlbert and Mary Lasker賞をHounsfieldとともに受賞した.1980年のノーベル賞選考にあたっては,Hounsfield,Cormackとともに候補に挙がったが,様々な理由で受賞には到らなかった[2].

Oldendorfは,回転断層撮影の基礎研究に加えて,あるいはそれ以上に,脳血流の研究で大きな足跡を残している.特に1970年の核医学検査による血液脳関門の定量的研究は記念碑的な論文[3]で,その後もこの領域で250編以上の論文を著し,現在広く行われているPET,SPECTなどによる脳血流検査の基礎を築いた.1992年,カリフォルニア大学神経学精神医学教室の教授在職中,心疾患の合併症で死去した[3-5].

出典