このサイトについて

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目的

このサイトは,放射線医学,画像医学の歴史を,放射線医学に興味をもつ方々に広く紹介する目的で作製しました.

特徴

レントゲンによるX線発見前後から,現在にいたるまでの放射線医学,画像医学の歴史を分野別に記載すると同時に,それに関連する歴史的に重要な文献の原文と和訳を並載しました.

紹介する文献は,主に発見や発明の初報,技術的転機となった重要論文など,歴史的意義が大きい「原著論文」 を選びました.ただしここでいう原著とは,一般的な意味の研究論文だけでなく,技術文献,特許資料,学会のガイドラインなども含んでいます.また「関連文献」として,歴史的な経緯や背景を理解する上で役立つと思われる優れた総説,一般誌の記事,新聞記事なども積極的にとりあげました.

このほか「関連事項」 として,放射線医学以外とは直接関係がなくとも,放射線医学の流れを理解する上で重要と考えられる周辺事項を解説し,必要に応じて文献和訳も加えました.

作製の経緯

慶應義塾大学医学部放射線科学教室は,1920年(大正9年)に創設され,日本で最も古い放射線医学教室であり,教室の歴史は日本の放射線医学の歴史でもあります.このため,以前から教室のウェブサイトには,教室の沿革とあわせて放射線医学の歴史を断片的に紹介してきました.これをさらに充実,発展させ,独立させたのがこのサイトです.

現在なお継続的に追加,改訂中ですが,2020年,医学部開設百周年 と同時に 教室創立百周年 を迎えたことを機に公開しました.

出典と著作権

文献,写真はもちろん,本文の内容についてもできる限り詳しく出典を明記しました.論文の多くは1900年代前半のもので著作権は消滅していますが,著作権が存続しているものは出版社の許可を得てその旨記載しています.許可が得られなかったもの,著作権の状態が不明な文献の原文,和訳にはパスワードを設定してありますが,専ら研究を目的として閲覧を希望される方については,条件を確認の上で個別に公開しますので御連絡ください.

文献の和訳

外国文献和訳の是非には賛否あります.内容を精読するには原典に優るものはありませんが,概要を短時間で把握するにはやはり訳文に一利あるものと思います.科学論文の和訳については,逐語訳,意訳のいずれがよいか,これも意見の分かれるところですが,ここでは理解しやすさを優先して,できる限り自然な文体となるように努め,必要に応じて大幅に意訳しました.また適宜訳注を付しました.

参考資料

放射線医学の通史を扱った成書は少なく,出版年も古いものが多いのですが,いずれも大著,労作です.本サイトの記述にあたっては,引用文献として挙げた多数の論文のほかに下記の成書を参考にしました.

  • 後藤五郎.日本放射線医学史考.明治大正編 (第12回国際放射線医学会議, 1969)
  • 後藤五郎.日本放射線医学史考.昭和編 (第12回国際放射線医学会議, 1970)
  • 舘野之男.放射線医学史 (岩波書店, 1973)
  • 舘野之男.原典放射線障害-1896年ー1944年の資料から(東京大学出版会,1988)
  • 舘野之男.原典で読む画像診断史-IVRを含めて(エムイー振興協会, 2000)
  • 舘野之男.原典で読む放射線治療史(エムイー振興協会, 2001)
  • Bruwer AJ. Classic descriptions in diagnostic roentgenology. Vol. 1 & 2 (Charles C. Thomas Publisher, 1964)
  • Eisenberg RL. Radiology. An illustrated history (Mosby Year Book, 1992)
  • Mould RF. A century of x-rays and radioactivity in medicine (Institute of Physics Publishing, 1993)
  • Pallardy G, et al. Histoire illustrée de la radiologie (R. Dacosta, 1989)
  • Rosenbusch G, et al. Radiologie in der medizinischen Diagnostik (Blackwell Wissenschafts-Verlag, 1994)
  • Kleves BH. Naked to the bone - Medical imaging in the twentieth century (Basic Books, 1998)
  • Thomas AMK, et al. Classic papers in modern diagnostic radiology (Springer, 2005)
  • Thomas AMK, et al. The history of radiology (Oxford University Press, 2013)

 

執筆者

百島祐貴 (ももしま すけたか). 1982年 慶應義塾大学医学部卒.同放射線診断科専任講師,慶應義塾大学病院予防医療センター副センター長を経て,現在慶應義塾大学病院予防医療センター特任講師(画像診断担当).国際医療福祉大学非常勤講師(医学史担当).専門は画像診断学,神経放射線診断学.医学史,放射線医学史にも関心をもつ.医学博士,放射線科専門医.

《医学史・放射線医学史に関する主な著作》

執筆者の所属する慶應義塾大学医学部放射線科学教室には,日本の医史学の先駆者,日本医史学会の創立者のひとりでもある大鳥蘭三郎先生がおられました.先生は1945年から1983年まで医史学教室で医学史を講じられ,執筆者もその講義を受けたひとりです.しかし大鳥先生の没後,医史学教室は消滅し,医学部でもまとまった医学史の講義はありません.全国的にみても医学史を講じている医学部は減少の一途を辿り,おそらく現在のところ順天堂大学医学部医史学研究室が医学部で唯一の正式な医史学講座ではないかと思います.これも時代の趨勢として止むを得ないところです.

以下,執筆者の私見です.学問の歴史を学ぶことの意義は,しばしば温故知新に求められます.故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る,すなわち過去の歴史の勉強から新しい知識が生まれる,現在を知り新しい知識を得るには過去の歴史を学ぶことが重要であると説かれます.確かにいわゆる文系の学問,特に哲学,宗教学などではそうかもしれません.しかしこと医学史についてはそうは思いません.医学の研究をする場合,もちろん先行研究を知ることは必要です.しかし日進月歩の医学の場合,せいぜい過去10年,長くても20~30年の歴史を知れば十分でしょう.半世紀,一世紀,それ以上前のことを知る必要はまずありません.歴史を知らずして現代医学を理解できないとか,医師たるもの医学史を知らなければ,などと書いてあるものがありますが,そんなことはないでしょう.

自分が医学史,放射線医学史に興味を持つ理由は,単におもしろいからです.日々診療に当たり最新の医学を実体験しつつ歴史を振り返ると,驚くようなこと,意外なことがたくさんあります.それを単におもしろいと思うから医学史を読むのであって,これが現在の自分の仕事に役立つことは期待していませんし,役立ったこともありません.最新鋭の機器,環境の恩恵に浴して日々の仕事をしながら歴史を読むとき,先人への畏敬と感謝の念を禁じ得ません.それも医学史を読む理由のひとつです.専門誌に掲載されている医学史研究論文の多くは,自ら医学,医療に携った経験のない研究者による,学問のための学問です.それはそれで有意義な仕事だとは思いますが,このような感動や思い入れは感じられません.このサイトを訪れる閲覧者が過去一世紀以上にわたる放射線医学の歴史をどうとらえるか,それぞれの立場に多少なりとも資するところがあれば幸いです.

謝辞

本サイトの作製にあたって御指導,御協力いただいた慶應義塾大学医学部放射線診断科 陣崎雅弘教授に深謝します.

文献の収集にあたっては,慶應義塾大学信濃町メディアセンターのスタッフの方々の全面的な協力を得ました.19世紀末から20世紀前半の古い文献は,書誌事項が不正確,不明瞭なものが多く,国内はもとより欧米の主要図書館にも所蔵されていないものもありましたが,さまざまな手段を駆使してほとんどすべての文献を検索,提供していただいたことに深甚の謝意を表します.

連絡先

本サイトについてお気づきの点があれば,下記宛て是非御連絡ください.

message@radiology-history.online

改訂履歴

  • 2024-04-24 「放射線科学教室の発展」「放射線科学教室の現在」を更新
  • 2024-03-16 「リンク集」 に ISR,ISHRAD を追加
  • 2024-02-04 「最初期の放射線医学」を更新
  • 2023-11-19 「軍事医学と放射線」を更新
  • 2023-12-04 「尿路造影とヨード造影剤」を更新
  • 2023-11-19 「軍事医学と放射線」を更新
  • 2023-08-27  総目次を追加
  • 2023-07-01  関連ウェブサイト「医学の歴史」を公開
  • 2022-12-18 「放射能と放射性物質」にMarie Curieの論文(1904)を追加
  • 2022-10-23 「放射線計測・単位」「初期の放射線障害」を更新
  • 2022-10-16 「画像下治療(IVR)」にDotterの論文(1975)を追加
  • 2022-10-15  人物篇に「デサウエル」を追加
  • 2022-10-11  人物篇に「アンプラッツ」「ジャドキンス」「ソーンズ」を追加
  • 2022-10-09 「心腔・冠動脈造影」を更新.Amplatzの論文を追加
  • 2022-10-04 「断層撮影」を更新.Grossmannの論文を追加
  • 2022-09-28 「断層撮影」を更新.Davidsonの論文を追加
  • 2022-09-24 「血管造影2」を更新
  • 2022-09-23 「消化管1」を更新,Krauseの論文(1923)を追加
  • 2022-09-10 「消化管1」を更新,Krauseの論文(1913)を追加
  • 2022-08-11 「軍事医学と放射線」を更新,Küttnerの論文を追加
  • 2022-08-03 「軍事医学と放射線」を更新,Hall-Edwardsの論文を追加
  • 2022-07-20 「CT」「胸部1」を更新
  • 2022-07-18 「MRI」を更新,Weinmannの論文を追加
  • 2022-07-13 「消化管1」にRendichの論文を追加
  • 2022-07-09 「原子爆弾・原子力発電」を更新
  • 2022-07-03 「照射法の進歩」を更新,Pucks,Elkindの論文を追加
  • 2022-06-18 「初期の放射線治療」にPerthes(1904)の論文を追加
  • 2022-06-04 「フィルム・グリッド」を更新
  • 2022-05-26 「原子爆弾・原子力発電」を更新
  • 2022-05-18 「原子爆弾・原子力発電」を追加
  • 2022-05-03 「最初期の放射線医学」を更新,人物篇に「ホール=エドワーズ」を追加
  • 2022-04-03 「粒子線治療」を更新
  • 2022-03-21 「粒子線治療」を追加.人物篇に「トビアス」を追加
  • 2022-02-11  人物篇に「ペルテス」を追加
  • 2022-02-05 「CT」を更新,人物篇に「オルデンドルフ」を追加
  • 2022-01-22 「核医学画像装置」「初期の放射線障害」を更新,人物篇に「クール」を追加
  • 2022-01-12 「核医学画像装置」を更新
  • 2021-12-18  人物篇に「アルバース=シェーンベルク」を追加
  • 2021-12-18 「放射線学会・学会誌」を追加
  • 2021-12-11 「初期の放射線障害」を更新
  • 2021-12-05 「医学以外の放射線利用」を追加
  • 2021-10-02 「産婦人科領域」を追加
  • 2021-08-22 「初期の放射線治療」を更新,Dessauer(1905,1908)の論文を追加
  • 2021-08-14 「軍事医学と放射線」を更新,Beevorの論文を追加
  • 2021-08-08 「消化管2」を更新,人物篇に「高橋信次」「芳賀榮次郎」を追加
  • 2021-07-20 「超音波検査」を追加
  • 2021-06-11 「消化管2」にHirschowitzの論文を追加
  • 2021-06-01 「胆道系」を追加
  • 2021-04-22 「法医学と放射線」を追加
  • 2021-03-21 「慶應義塾と放射線医学-初代教授藤浪剛一」を更新
  • 2021-03-17 「最初期の放射線医学」を更新,芳賀榮次郎の論文を追加
  • 2021-03-12 「放射線治療1」を更新,PerthesとDessauerの論文を追加
  • 2021-02-21 「心腔・冠動脈造影」を更新
  • 2021-01-31 「軍事医学と放射線」を追加
  • 2021-01-22 「IVR1」を更新,人物篇に「クック」を追加
  • 2020-12-19 「MRI」を更新
  • 2020-12-05 「MRI」を追加,人物篇に「ダマディアン」「マンスフィールド」「ローターバー」を追加
  • 2020-11-10 「CT」を更新
  • 2020-11-05 「IVR2」を追加
  • 2020-10-14 「IVR1」を追加,人物篇に「ドッター」「グリュンツィヒ」を追加
  • 2020-09-11 「頭部1」にCaldwellの論文を追加
  • 2020-09-06 「ラジウム療法」のDominiciの論文を更新
  • 2020-08-25  人物篇に「コールドウェル」を追加
  • 2020-08-16  ウェブサイト公開