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造影剤リピオドール

治療薬から造影剤へ

リピオドール(Lipiodol)はヨウ素を含むケシ油で,1901年に薬物学者/薬剤師のLaurent Lafay(ラフェイ) と Marcel Guerbet*(ゲルベ)が甲状腺疾患,リウマチ疾患,感染症などの治療薬として開発し,当初はLipiodol Lafayの名称で販売されていた.投与後のX線写真で濃い陰影を作ることは比較的早くから知られていたが,これを積極的にX線造影剤に応用したのは神経内科医のJean-Athanase Sicard(シカール,1872-1929)とJacques Forestier(フォレスティエ, 1890-1978)である.

Sicardは座骨神経痛,腰痛症の治療としてリピオドールの硬膜外注射を行なっていた.ある時,Sicardの指示で治療に当ったForestierが誤って深く穿刺して脊髄クモ膜下腔に注入してしまい,X線透視でみると体位に応じて油滴がクモ膜下腔を移動するのが観察できた.髄膜炎を危惧したが予想に反して何の副作用もなかったことから,造影剤としての利用を試みた.

1922~23年にまず硬膜外腔造影剤として[→原著論文],その後脊髄造影(ミエログラフィー),関節,瘻孔,気管支造影[→原著論文]など全身に適用を拡大して報告し[→原著論文],高度のX線不透過性と副作用の少なさから万能の造影剤として称揚された.しかし,油滴となって分布が不均一であること,および排泄されずに体内に長く残存することから必ずしも使いやすいとはいえず,まもなくウロセレクタンをを初めとする有機水溶性ヨード製剤が登場したため,ほとんどの領域で次第にこれに置換されて行った[→関連論文]. 現在,造影剤としてのリピオドールの適応は,子宮卵管造影にほぼ限られている.

* Marcel Guerbet は,Lafay の後任としてパリ高等薬学学校(École Supérieure de Pharmacie de Paris) の応用化学部長をつとめ,1926年に息子André Guerbetとともに製薬会社Guerbetを創設した.現在もリピオドールは同社が供給している.

原著論文

《1921-造影剤としてのリピオドールの初報》
リピオドールによる硬膜外腔のX線検査法
Méthode radiographique d'exploration de la cavité épidurale par le lipiodol
Sicard JA, Forestier J. Rev Neurol 47:1264-6,1921

【要旨】リピオドールは神経痛,リウマチの治療薬であるが,X線で明瞭な陰影を作り,組織耐容性に富むことから造影剤として利用できる.そこでまず硬膜外腔造影これを用いた.従来この目的には collargorや空気が使用されたが,有痛性で造影効果にも優れなかった.リピオドールの硬膜外腔への注射は容易で,穿刺針が黄色靭帯を通過した感覚を目安に硬膜外を穿刺して2cc注入する.その後は体位変換によって目的の部位に分布させる.リピオドールはその場に留まり,2~3週間はX線像に変化がない.万が一脳脊髄液に混入しても問題なく,その場合も体位に応じてリピオドールを任意の高位に誘導できる.

【解説】 Sicard, Forestierはリピオドールの造影剤としての応用に関する論文を数百編も著しているが,これが初報である.腰椎穿刺の要領で腰部硬膜外腔に注入するもので,写真は添えられていないが,比較的手技が容易であること,副作用がほとんどないことが強調されている.特に最後に,もし硬膜を超えてクモ膜下腔に注入しても問題ないと付け加えているが,その後の臨床応用ではこのクモ膜下腔造影(ミエログラフィー)が重要な役割を果たすことになる.

原文 和訳


《1923-さまざまな部位のリピオドール造影法》
ヨード油性剤(リピオドール)による一般X線検査法
Exploration radiologique par l'huile iodée (Lipiodol)
Sicard JA, Forestier J. Presse Med. 2 Juin:493-6,1923
lipiodol-sicard3

図1. 腸腰筋冷膿瘍の例.大腿部の膿瘍にリピオドールを注射し(→),脊髄の結核病巣に連続する病変の全体像が描出されている.

【要旨】リピオドールは組織耐容性に優れた薬剤で,様々な疼痛に対する鎮痛効果があると同時に,X線写真で濃い陰影を作る.このリピオドールの新しい放射線診断上の役割について述べる.クモ膜下腔の検査では,1/2~1ccを腰椎穿刺により投与することにより容易に造影でき,また環椎-後頭部穿刺により高位を造影することもできる.これにより脊髄圧迫性病変の術前検査が可能であった.

硬膜外腔造影では,約5ccを腰椎穿刺により投与し,Pott病(脊椎結核)や脊椎転移の症例で,骨病変より広範に広がる硬膜病変を診断できた.

冷膿瘍,骨瘻孔ではしばしば原発部位の同定が難しいが,リピオドールにより瘻孔経路を知ることができた(図1).

気管支・肺領域のX線造影については本稿が初報であり,リピオドールを気管内に投与することにより,気管支を造影できる.5~10ccで下葉,中葉は少量で造影でききるが,上葉の造影には少なくとも20ccが必要である.

【解説】 初報では硬膜外腔造影を報告したが,その適応をさらに脊髄クモ膜下腔造影,瘻孔造影,気管支造影にまで拡大し,正常例,異常例をふくめ手技,所見を記載している(この前年にもほぼ同様の報告があるが[1],本報の方が詳しいのでこちらを紹介した).写真はなく,多数のシェーマが添えられているが,必ずしも本文とは対応しておらず,様々な疾患,病態のX線所見が記載されている.

Sicardらはこの直後にリピオドールによる血管造影も報告しており[2],その後日本でも造影剤ロンブル(L'ombre)として使用されたこともあるが[3],ちょうどこの時期にウロセレクタンなど水溶性有機ヨード造影剤が登場し,結局普及することはなかった.

原文 和訳


《1924-リピオドールによる気管支造影》
ヨウ化油の気管内注入による気管支肺の放射線学的検査
L'exploration radiologique des cavités broncho-pulmonaires par les injections intra-trachéales d'huile iodée
Sicard JA, Forestier J. J Med Franc 13:3-9,1924
lipiodol-sicard3

図2. 右肺底部の気管支拡張症.経声門法,右側臥位,20cc注入後.

【要旨】リピオドールを用いた気管支造影を,動物実験で安全性を確認した上で臨床例に行なった.注入法には経口的にカニューレを挿入する声門上法,経声門法,前頸部を穿刺する輪状甲状間膜法があるが,一般医には輪状甲状間膜法が適しており,専門医には経声門法もすすめられる.検査時の体位は,下葉の検査では坐位で良いが,中葉,上葉では臥位が必要で,体を傾けることで左右に入れ分けることができる(図2).投与量は15~20ccが標準である.造影後2分で細い気管支まで全範囲が見えるようになり,検査後20~30分持続する.

気管支拡張症,肺空洞病変,胸膜炎,胸壁瘻などの症例で,有用な所見が得られた.300回以上の検査を行ない,喉頭蓋浮腫の1例を除いて大きな副作用はなかった.

【解説】気管支造影の試みは早期から,動物実験のレベルの報告は散見されたが,ヒトへの応用は長らく進まなかった.その最大の理由は,気道刺激性のない適当な造影剤が見当らなかったことにあった.粉状ビスマスの噴霧,ペースト状ビスマスなどが試みられたが,いずれも不成功に終わっていた.Sicard,Forestierが開発したリピオドールはこの問題を解決して,気管支造影の臨床応用の道を一気に開いた.この論文は,造影剤の投与法から,多数の臨床経験をもとにした正常所見,異常所見まで記述しており,その後の気管支造影の基礎となった.その後リピオドールは,1950年代後半にDionosilに取って代わられるまで気管支造影に長く使われた[4]

原文 和訳

関連文献

《1995-リピオドールの歴史》
リピオドールの歴史(1901 ~ 1994) -ある 薬剤の経時的変遷をたどって
Histoire du Lipiodol (1901-1994) ou comment un médicament peut é voluer avec son temps
Bonnemain B, Guerbe M. Revue d'histoire de la pharmacie, 83(305):159-170,1995
lipiodol-sicard3

図3. リピオドールの後頭下穿刺によるミエログラフィー.

【要旨】元素としてのヨウ素が発見されたのは1811年であるが,13世紀以来種々の疾患の治療薬としてその効能が知られており,19世紀後半にはヨウ化油が薬品として製造されるようになった.1901年,Lafayが発明したリピオドール(lipiodol)は,甲状腺治療薬,殺菌薬などとして広く使われたが,1921年,SicardとForestierはそのX線造影剤としての効能に気付いた.最初に応用されたのは脊髄クモ膜下腔造影(ミエログラフィー)(図3),次いで気管支造影であったが,その高い造影能と組織耐容性がから様々な検査に適応が拡大された.その後,多くのX線検査においてリピオドールは水溶性ヨード造影剤に置換されていったが,1950年代になるとリンパ管造影剤として注目され,さらに1981年には日本で肝細胞癌への選択的集積が発見され,再び活躍の場を得た.このようなX線造影剤としての役割の他,その本来の治療薬としては,風土性甲状腺腫の予防薬として使用され,1989年にはWHOの必須薬品リストにも掲載された.

【解説】1901年に治療薬として開発されたリピオドールが,1920年代に神経内科医のSicardとForestierによって油性X線造影剤としての用途が発見されて広く使用され,その後水溶性ヨード造影剤の普及とともにいったんは降板しかかったものの,1950年代にリンパ管造影,1980年代に肝細胞癌のCT診断への有用性が見いだされ現在に至っている,波瀾万丈の歴史が丁寧に記載されている非常に質の高い総説である.リピオドールの開発者はLafayとされるが,実際の仕事はその後製薬会社Guerbet社を創立したMarcel Guerbetによるものであった.なぜGuerbetの名前が表に出なかったのかという点についても考察されており興味深い.

原文 和訳


《2000-リピオドールの造影剤としての初期の歴史》
放射線医学におけるリピオドール - 初期経験(1921 ~ 1931)
L'huile iodée (lipiodol) en radiologie. Les premières années d'expérience : 1921-1931
Bonnemain B. Revue d'histoire de la pharmacie, 48(328):493-508,2000

【要旨】1921年,SicardとForestierは,リピオドールによる脊髄クモ膜下腔造影を発明した.これは治療目的で硬膜外腔に注射したリピオドールが誤ってクモ膜下腔に漏出してしまったにも関わらず,副作用がなく,X線写真でクモ膜下腔が造影されたことに端を発するものであった.その後,気管支造影,子宮卵管造影,胆道造影などにもリピオドールが使われるようになった.血管造影については,日本人研究者がリピオドールをもとにした造影剤ロンブル(l'ombre)を開発した.尿路造影には,1929年に開発された水溶性ヨード造影剤が主に使われたが,尿道造影についてはその後もリピオドールが使われた.このほかにも,瘻孔,涙道,唾液腺,関節などの造影にも有用であった.しかし,1921~31年に開発されたリピオドールの適応のすべてが,その後消滅し,その多くは水溶性ヨード造影剤に替わっていった.

【解説】前掲の総説と同じ著者による,1921年にSicardとForestierによってリピオドールのX線造影剤としての有用性が報告されてから10年間の歴史に焦点を絞った総説である.各部位におけるリピオドールの適応,使用法が具体的に記されており,前掲論文と同じく優れた総説である.

原文 和訳

 

リンパ管造影剤としての応用

水溶性造影剤にその座を奪われたかに見えたリピオドールのその後の歴史はやや特殊である.まず,1960年代になってリンパ管造影剤としての価値が認識されリバイバルを果たした.

1927年のMonizによる脳血管造影を皮切りとして,1920年代後半から全身の血管造影法が相次いで開発されたが,非常に細いリンパ管に造影剤を注入する技術的困難のためリンパ管造影はなかなか実現しなかった.この壁を打ち破ったのが,Kinmonthらで(1955),事前に皮下に色素を注射してリンパ管を肉眼で容易に同定できるようにすることで,リンパ管造影を比較的容易に行なえることを示した[→原著論文].Kinmonthが使用した造影剤は水溶性ヨード製剤であったため,注入後ただちに撮影しないと造影剤が拡散して画質が急速に劣化する問題があった.

Wallaceは,油性造影剤リピオドールを使用することによりこの問題を克服し,実用的なリンパ管造影法を確立した(1961)[→原著論文].この方法はその後長く行なわれ,特に悪性リンパ腫の病期診断には重要とされ1990年代までは行なわれていたが,CT,MRIなどの画像診断法が発達した現在,リンパ管造影が行なわれる機会はほぼ消失したといえる.

原著論文

《1955-水溶性ヨード造影剤と色素皮下注入によるリンパ管造影》
リンパ管造影 - 下肢における臨床応用の技術
Lymphangiography - A Technique for its clinical use in the lower limb
lipiodol-kinmonth

図4. リンパ浮腫.Diodone 10ml注入終了1.5分後に撮影.

Kinmonth JB, Taylor GW, Harper RK. Brit Med J. Apr 16, 940-2, 1955

【要旨】皮下に色素を注射して,非常に細いリンパ管を肉眼的に可視化することにより,造影剤を注入できるようにする方法を述べる.パテントブルー色素2~5mlを足趾間に皮下注し,足,膝,股関節を5分間受動的に動かすことにより,色素が骨盤腔まで達する.下肢を挙上して虚血とし,趾間部に切開を加え,周囲を剥離して青染したリンパ管を露出し,最も細い皮下注射針を穿刺して70%Diodoneを10ml注入する.注入後はただちに下肢全体を撮影する.遅れると造影剤がリンパ管外に浸透して不明瞭になる.早発性リンパ浮腫,乳房切除後の上肢浮腫,下肢静脈炎後潰瘍などを撮影した(図4).

【解説】事前に色素を皮下注することによりリンパ管を同定し,これを穿刺,造影する方法を初めて報告した論文である.穿刺手技,撮影の手順が詳細に記述されている.本文でも強調されているように,水溶性ヨード造影剤を使用しているため,造影剤がリンパ管外に急速に漏出してしまうため素早く撮影する必要があり,写真を見る限り造影効果も必ずしも良好とは言えないものであった.現在ではリンパ管造影はほとんど行なわれないが,色素によるリンパ系染色はセンチネルリンパ節生検に際して行なわれることがあり,この技術は形を変えて現在にも活かされていると言える.

原文 和訳


《1961-リピオドールによるリンパ管造影》
リンパ管造影-その診断的ならびに治療的可能性
Lymphangiograms: Their diagnostic and therapeutic potential
lipiodol-wallace

図5. リンパ肉腫.リピオドールによるリンパ管造影.水溶性造影剤と異なり,長く体内にとどまる.

Wallace S, Jackson L, Schaffer B, Gould J, Greening RR, Weiss A, Kramer S. Radiology 76:179-199,1961

【要旨】Kinmonthらが報告した色素を用いたリンパ管造影法に多少の変更を加え,種々の疾患のリンパ管造影を撮影した.エバンスブルー色素を指(趾)間に皮下注し,リンパ管を同定,分離し,細い注射針でリピオドールを上肢では5~7ml,下肢では10~15mLを,7ml/時間で注入する.リンパ管は注入終了直後の撮影で最も良く描出され,造影剤は数時間でリンパ管から消失する.リンパ節は24時間後の撮影で最も良く描出され,造影剤は正常リンパ節には約4週間,異常なリンパ節では4~6か月残存し,この期間中は追加造影することなく撮影できる(図5).

110症例,207肢(下肢174,上肢33)を検査した.正常リンパ節は,内部の性状は均一な網状パターンを示す.リンパ浮腫では,リンパ管の増生から完全消失まで所見は多彩であった.リンパ節炎では,リンパ節は腫大するが性状は正常に保たれる.リンパ腫では,リンパ節が腫大し,レース状,ゴースト状になる.癌のリンパ節転移では,虫喰い状の像を呈する.合併症としては一過性リンパ管炎2例,局所の創感染3例,肺塞栓数例を経験した.

リンパ管造影は,診断,進展範囲の決定,術前計画,放射線治療の照射野決定,放射線治療や化学療法の反応性の評価に有用である.

【解説】Kinmonthら方法に若干の変更を加えたと述べているが,最も大きな違いは造影剤で,Kinmonthらが水溶性ヨード造影剤を使用したのに対して,Wallaceは油性造影剤リピオドールを使用している.リピオドールはX線吸収がはるかに大きいことに加えて,造影後速やかにリンパ管外に漏出する水溶性造影剤と異なり長くリンパ系にとどまることから,時間的余裕をもってコントラストの良い画像を撮影でき,また追加造影することなくフォローアップが可能である.この方法は,その後のリンパ管造影の基本となった.

原文 和訳

肝細胞癌への集積

リピオドールの次なる転機は肝細胞癌の治療,診断への応用である.リピオドールが正常肝に長く残存することは以前から知られていたが[5],1979年,中熊,今野ら(熊本大外科)は,抗癌剤の選択的肝動脈投与に際して抗癌剤の効果を増強する方法としてリピオドールの混注を試みた際,1週間後の撮影時に腫瘍に一致してリピオドールが集積していることを発見し,剖検例の病理所見を含めて報告した[6].

さらに1982年には,CTでもこれを確認して診断的有用性を明らかにした[→原著論文].さらに1980年代には肝細胞癌の血管内治療後のCT造影剤として,治療効果判定,経過観察に有用であることが示され,あらためて重用されるようになった.

治療薬としてスタートし,万能造影剤としての用途が見いだされてまもなく,水溶性造影剤にその地位を奪われながらも,新たな適応の下に1世紀を超えて使用されている長命な造影剤は,消化管の硫酸バリウムとならんで稀有な存在である.

原著論文

《1982-リピオドールの肝細胞癌のCT診断への応用》
リピオドールと親油性高分子制癌剤スマンクスの肝動脈内投与とその臨床成績
今野俊光,前田浩,緒方賢治,渡辺栄二,中熊健一朗 他.癌と化学療法.9:2005-15,1982
lipiodol-wallace

図6. 多発肝細胞癌へのリピオドール集積.

【要旨】肝細胞癌に対して,親油性抗癌剤スマンクス3~4mgと油性造影剤リピオドール3~4mlを混合して投与した.リピオドールは腫瘍選択的に集積することから,単純写真,CT,超音波検査などで腫瘍の局在が明確となることに加え(図6),またスマンクスが腫瘍に集積することにより選択的に治療できるという2つの利点がある.34例の肝癌にこの方法を適用し,95%で腫瘍径の縮小を見た.従来の治療法と比較して生存期間の大幅な延長を認めた.

【解説】肝動脈造影後にリピオドールが肝細胞癌に選択的に集積することを発見したのは熊本大学外科のグループであるが[6],これを初めてCTで証明した報告である(この翌年に英文論文を著しているがほぼ同じ内容である[7]).その後,シスプラチン,アドリアマイシンなど水溶性抗癌剤の懸濁液でも同様に行なわれ,以後数年間で500編以上の論文がこのテーマで発表された.当時は,リピオドールの集積機序は不詳であったが,その後の研究で,肝細胞癌がリピオドールの排泄機序であるリンパ系を欠くことによることが明らかにされた.現在もこのリピオドールCTは,選択的動注による化学塞栓治療(TACE)後の画像評価法として広く用いられている.

原文(許可を得て転載)

出典